会計事務所の系統
ほんとうに嬉しくて、50年以上を経た今でも、お年玉をくださった先生お1人おひとりの名前が記憶に残っているくらいだ。
一介の出入り商人に対して(それも、見習い身分の丁稚である)、そんな親切を先生方がしてくださったということも、私自身が人と話すのが好きで、その上(自分で言うのは気がひけるのだが)、人からあまり嫌われない性格だったことによるのかもしれない。
そうした性格があればこそ、歯科商店の仕事が天職にもなったのだった。
とはいえ日中にはいやなお客さんもいたことは確かだった。
ある先生など、私のような出入りの業者に対して、どういうわけか、やたらと横柄で、絶えずつまらないクレームをつけてくるのである。
いつも自分が医師であることを鼻にかけていて、私たちをずっと下の人種くらいにしか見ていないことが手に取るようにわかるのだ。
そんなこんなだから、訪問して注文をもらっても、私にはありかたいというよりか、むしろ不快感しか残らなかった。
その先生は、私か2日に一度は行かなければならないほどのお得意ではあったのだが、さすがにいやで仕方がなかったことをおぼえている。
その先生への訪問が終わると、やっと終わったとホッとするのだが、次の日の午後くらいになると、「また明日はあそこに行かなければならないのか……」という思いが心に湧いてきて、なんとなく憂僻な気分になってくるのである。
仕事は好きだったのだが、それだけは当時のいやな思い出として、今でも私の心に残っている。
そんなこともあったから、後に会社を興したあとでも、私は社員に、「いやな客なら、もう行かなくていいよ」と言うようにしているのである。
給料をもらって仕事をするというのは、そのまま、仕事がその人間の人生と直結しているということだろう。
せっかくの自分の人生が、つまらない客のために不快になるくらいなら、そんな客など、こちらから願い下げにしたほうが、よほど精神衛生のためにもなろうというものだ。
しかも、最近、当社に入ってくる社員は、女子社員も含めて、みんな大卒ばかりである。
きちんと勉強して社会に出てきた人問が、そんなつまらない先生に見下される理由など、どこにもない。
私の信念なのだが、医院のスタッフや出入り業者にも気を配って仕事をしておられるような先生は、必ず患者さんからも信頼されて繁盛しているものである。
逆に、業者に対して先生が横柄なところは、なんとなく患者さんの数も少ないし、院内も暗い感じがしてならない。
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